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★高橋洋一「消費増税なんて必要ナシ国債は暴落しないし、借金だって問題ナシ」&橋下徹氏が有田芳生参院議員に激怒&加計学園行政は歪められたのか(若干書き起こしメモ)

◆ ◆
消費増税なんて必要ナシ!?日本経済の本当の話をしよう
国債は暴落しないし、借金だって問題ナシ


髙橋 洋一,ぐっちーさんの対談
 (はじめに)

安倍政権の支持率が落ちてきたのと前後して、自民党内でも「消費税増税派」を中心に「このままでは日本は財政破綻する」「日本国債が暴落する」といった財政再建のための勉強会が開かれ、アベノミクス批判が強まっている。



マスコミが財政危機を煽ることもあり、「そんなに危機的なら消費増税も仕方ないか」と考えるようになった読者も少なくないことだろう。



だがこれは本当だろうか? 安倍政権の危機的状況に乗じた財務省の巻き返しではないだろうか? 国債暴落や財政破綻の可能性について、先ごろ日本経済の真の姿をわかりやすく解説した入門書『勇敢な日本経済論』(講談社現代新書)を出した高橋洋一氏とぐっちーさん(山口正洋氏)に論じ合っていただこう。




「負債の部」しか見ていない
高橋 
 私だって、財政破綻なんてことが起きたらヤバイと思うよ。だけど、いまはそんな状態じゃないって数字が示している。もうマスコミやエコノミストが情けないとしか言いようがないな。財務省からもらった資料を鵜呑みにして、自分の頭で考えないから。
 だけど、データで見ると、答え(日本の財政は財政破綻的ではないこと)は一目瞭然なんだよ。


山口 
 データなんかいっさい無視、(日本は国債残高が1000兆円あるから、ギリシアのように財政破綻の手前にあるなどと)イメージだけで危機を煽る人が多いんですよね
数字を基にした議論になってない。


高橋 
 実はね、日本国政府のバランスシート(貸借対照表)を初めて作ったのが私なの。
 1995年ぐらいの話だけど、大蔵省理財局ってところにいたときに作った。
 だから、私は誰より国の財務状況に詳しいんだよ(笑)。


 (管理人より
  日本国政府のバランスシート(貸借対照表)を初めて作ったのが高橋洋一氏というのはネットで同氏の出演番組を見ている人なら、よく知られた事実)
 なお、ここで言及しているのは日本国政府単体のB/S。
  実は巨大な連結子会社日銀の分は含めていない。話はあとで出てくる


山口 どうして(日本国政府の)バランスシートを作ることになったんですか?


高橋 
 理財局って、政府の資産と負債を管理する部局だから、正確な数字を把握する必要があったの。バランスシートは必須だった。
とはいえ、主計局からは「余計なことをするな!」って怒られた


私のバランスシートはお蔵入りになったし、「内容を口外するな」と釘を刺された
大蔵省全体としては、細部まで知られたくなかったんだと思う。
まあ、結局、2005年からは正式に公表されるようになるんだけどね。


 (2005年から→小泉、安倍第一次のころ)



山口 そのとき初めて、国の財務状況を数字で把握したわけですね。


高橋 うん。バランスシートを作りながら、すぐ気付いたんだ。
 日本政府って資産がすさまじく多いの。
 当時から大蔵省は財政危機を煽ってたんだけど、「これは嘘だな」とピンときたよ。    データに基づいて考えれば、まったく危機的な状況じゃない。
誰が見てもわかるはずなんだけどね。



【バランスシートは両側を見よ】


山口 財務省は「国の借金が1000兆円を超えていて、国民一人当たりにすれば830万円近い」なんて危機感を煽ってるけど、あれってバランスシートの右側しか見てませんよね。負債の部の話しかしていない


高橋 そうなんだよ。民間企業の人には当たり前の話すぎて、こんなの説明するのが失礼な感じもするけど、バランスシートって右側に負債と資本、左側に資産があって、その両方を見なきゃ実態がわからない。



2016年3月に公表された2014年度版を見てみると、たしかに右側に1172兆円の負債がある。このうち「国の借金」と呼ばれるのは、公債885兆円、政府短期証券99兆円、借入金29兆円で、合計1013兆円。


山口 1000兆円の借金があるということ自体は事実なんです。だけども、右側しか見ていない。


高橋 そうそう。バランスシートの左側を見ると、資産が680兆円も載っている。
負債の1172兆円と資産の680兆円を差し引きすると、492兆円しかネット債務は存在しないわけ。こうしたネット債務で考えるのが世間の常識なんだよ。
負債の1013兆円だけ取り上げるって、非常識な話なんだ。


山口 負債の部だけ見て大騒ぎするって、ホントおかしな話ですよね。
 あるメーカーが社運をかけた大勝負に出たとしましょう。
 銀行から巨額の借り入れをして、世界最先端の工場を作る。新工場の技術力はライバルの追随を許さないから、この資産さえあれば、いくらでも稼げる。


バランスシートの左右を見てはじめて、その会社の将来性が読めるわけですところが、負債の部だけに注目して「こんなに巨額の借金があれば、じきに倒産する」って大騒ぎしている。そんなイメージに近いですよね


高橋 同じ資産でも、工場なんかは換金性が低いよね。売ろうと思ったとき、すぐに買い手を見つけるのは難しい。だけど、国の資産680兆円のうち、現金・預金が28兆円、有価証券が139兆円もあるの。これらはすぐ換金できるでしょう


さらに貸付金138兆円、出資金70兆円というのも、比較的換金しやすい。要するに、375兆円ぶんは換金しやすい金融資産なんだ。


山口 ネット債務で考えたら、借金は言われている半分ってことですよ。GDP比で言うと、だいたい100%ぐらいと考えておけばいい。


【ネット債務は消えつつある】


高橋 さらに言うとね、私は連結ベースのバランスシートも作ってたんだよ。
日銀のバランスシートまで組み込んだやつ


山口 民間企業では単体の決算と同時に、子会社まで組み込んだ連結決算を出すのが常識ですもんねえ。


高橋 さすがにこっちは完全に潰された。いま財務省も子会社を組み込んだ連結ベースの数字を公表してるけど、これには日銀が含まれていないの。だけど、政府の日銀への出資比率は5割を超えているし、監督権限もある。まぎれもなく日本政府の子会社なのに、日銀だけは組み込もうとしない。


山口 
要するに、(財務省にとって)日銀を除外しないとマズイ事情があるってことですね


高橋 財務省がいちばん指摘されたくないところなんだよ。いま日銀は国債をどんどん買ってるでしょう。日銀のバランスシートが膨らみ続けている。2015年度末だと、国債349兆円を含めて、資産は405兆円もある。


もちろん負債の部では、国債を買っただけの日銀券や当座預金が膨らんでるわけだけど、これらは無利子で償還期限もないから、実質的には負債じゃないわけ。これを連結させると、日本政府の2015年度末のネット債務は100兆円ぐらいしかないんだよ


山口 100兆円? ほとんどないじゃないですか。日銀はその後も国債を買い続けて、保有する国債は400兆円を超えている。このまま金融緩和が続けば、早晩、連結ベースのネット債務は消えてしまうということですね?



高橋 そうなんだ。実質的には財政再建が終わっちゃってる。それを知られるとマズイから、財務省は日銀を連結から外したんだと思う。
 ネット債務の100兆円って、GDP比で20%ぐらいなの。
 ネット債務のGDP比を比べると、
  アメリカで65~80%、
  イギリスで60~80%だから、
それよりよっぽどいいんだ。なにが財政破綻だって言いたくなるよ。


山口 高橋さんはよく「損得勘定で考えない左翼的な人は学校、マスコミ、役所に多い」と指摘しますよね。これらの業界ではバランスシートを日常的に見る習慣がないから、理解できないんでしょう。で、最悪なことに、バランスシートって感覚のない人たちこそ、まさに日本のオピニオンリーダーとして世論を引っ張ってる人たちなんですよ(笑)。これじゃあ、我々の主張はなかなか受け入れられない。


高橋 
 マスコミは財務省の「ポチ」状態で、彼らの言いなりなんだよ。
 財務省の機嫌を損ねたらネタがもらえないので、尻尾を振ってる。
  だから、こうした財務省にとって都合の悪い真実は絶対に報道されないんだよな。


 マスコミは
  財務省だけでなく、警察の闇も書きたがりません。
   (警察の闇で有名なのはパチンコ業界のこと。)
  あと電通の悪口の極力いいません。広告がこなくなると困るから。
  (高橋まつりさんの死亡の件はかなり特殊)


  もっと有名なのが電力のこと。3.11で大きく変わったが…
  


【政府は国民を騙している】


山口 すべての役人が事情をわかってるとは思わないけど、少なくとも財務省の高官は実情を理解してるはずですよね。


彼らがズルイと思うのは、「1000兆円の借金をすべて返済するのに何年かかります」みたいな言い方をするんですよ。だけど、全部返済しなきゃいけない理由がどこにあるんだ


高橋 返す必要なんかねえよ、あんなの。企業は返さないのが普通だよ


山口 ですよね。企業活動の目標は、借金を返済することじゃない。金儲けすることが目的なんだから。


高橋 まあ、返さないと言うと怒られちゃうけど、借り換えるのが普通だよね。借金はずっと消えない。貸す側の銀行だって、その企業がずっと借金をしたままで、金利を払い続けてくれるほうが嬉しいんだから。その借金でこんなに立派な工場を建てましたよ、という成果さえ見せれば、「すべて返済しろ」なんて求めないよ


山口 だから普通は借り換え、借り換えの連続です。借金を全部返済しようなんて企業のほうが珍しい。ところが、これが国の話になると、なぜか「すべて返済しなきゃいけない」という前提で語られてしまう。それを聞いた側も、すべて返済するのが当然かのように聞いてしまう。財務官僚は頭がいいですよ。


高橋 国民をだまそうとしてるんだよ。じゃあ、なんで借金をすべて返したがるのか? もちろん理由がある。さっき国の資産680兆円のうち、貸付金が138兆円、出資金が70兆円と言ったけど、これらはみんな天下り先に流れている金なんだ


山口 各省庁の天下り先への出資金であり、貸付金だと。


高橋 膨大な数の天下り先があるんだけど、なかでも財務省所管の貸付金が突出して多い。これこそ、財務省OBの天下り先が他官庁より圧倒的に多い理由なんだ


国の借金を税金で返済すれば、天下り先の資産や出資金はまるまる残っちゃうじゃない。「借金をすべて返せ」と叫ぶ理由はこれなんだ。借金返済は国民に負担させて、自分たちは他人の金で悠々と老後を送りたいってことだよ。


(管理人より
上記の財務省所管の貸付金を受ける会社というのは政府系金融機関とか、そういうところ。日銀の黒田さんはアジア開発開発銀行の総裁だったとか、そういうの。
ちなみに財務省はもうひとつ強力な天下りを誘発する理由がある。それは税。
 税務署OBが幅広い企業の経理顧問みたいにいる。)


山口 国の借金を全部返したら、いま以上に「天下り天国」になっちゃいますね。いま消費増税にしぶしぶ賛同している人も、こういうカラクリを知ったら意見を変えるんじゃないかな。


高橋 なんだかエグイ言い方になっちゃったけど、もうそれしか合理的説明がつかないんだ。だって、借金をすべて返す理由がないんだもん。実際、彼らが天下り先にいっさい手をつけさせないようにしてるのは事実なんだよ。私も第一次安倍政権で公務員改革をやろうとしたけど、ことごとく潰された


(管理人より
 民主党で枝野、蓮舫が事業仕分けとかやったわけだが、
  財務省と警察の事業仕分けはたぶんやってなかったような…
 
 なお事業仕分けしたけど、
  民主党政権下で事業仕分けの実質はとん挫=改革はほとんどどやってない)
 その辺から民主党はマニフェストにあることはやらなくて、
  マニフェストにないこと、あるいはしないと約束したもの(消費増税=事実上野田政権下で決定)を行った。



山口 高級官僚が甘い汁を吸いたいがために、天下り先を温存する。


高橋 そりゃ、そうだよ。
 退職後、特殊法人に2~3年いるだけで、また数千万円の退職金がもらえるでしょ。
いまは監視の目が少し厳しくなったけど、かつては「渡り」といって、特殊法人を渡り歩いて、そのたびに退職金をせしめる輩(やから)もいたんだ。絶対に天下り先は減らさないよ。




【政府資産がダントツで多い】


山口 普通の企業で考えたら、会社が潰れるほど危機的な状況なら、まずは関係子会社を整理しますよね。本当の危機ならリストラを考えるはず。


高橋 でしょう? 借金と資産の両方を減らし、財務をスリム化していくのが世間の常識だよ。それだけで財務体質が強化される。ところが、それは絶対にやろうとしない。天下り先の民営化なんて、猛烈に抵抗されるわけ。つまり、それほど危機的じゃないんだ。


海外の連中からもよく言われるよ。
「日本政府は全然、危機的じゃない。だって、何ひとつ売ってないじゃないか」って。


(世界的な金融危機が起こるたび、強い通貨としてドルも買われるけれど、ドル高以上に円高が進む。リーマンショック、チャイナショック、そして最近ではブレグジット…。すなわち日本のメディアが財政危機をどれほどいおうが、またS&Pやムーディーズなど世界の格付機関がなにをいおうが、何百兆円という資産を運用する機関投資家は、『日本は世界で最も財政が健全で、通貨不安がほとんどない。だから通貨危機になったら避難場所として円を買う』わけである。)


山口 
どこの国でも、ピンチのときはなりふり構わず売りますもんね
ギリシャだって財政再建のために、最大の港ピレウスを中国に売った


高橋 他にも、エーゲ海の島を売ったりね。郵便局とか競馬場とか、カジノに水道局も売ってる。ピンチなら政府資産を切り崩すのが当然なんだよ。


山口 日本人はけっこう誤解してるところがあって。例えば国が保有してる建物を売ったとしても、所有権を売るだけだから、使用料を払えば、その後も居続けることができるんです。


海外ではけっこう当たり前だし、日産自動車も工場用地をいったん売却してますよね。工場用地を証券化して売り、使用料を払って使い続ける。


高橋 所有権だけ売却して、そのまま借りればいいんだ。それに、仮に官舎が移転したからって、特に問題は起きないと思うよ。イギリスなんか、中央省庁の住所がよく変わるの。政府が所有するビルを証券化して売ってるんだ。


山口 政府がたくさんの資産を持つことに対して、欧米では国民が許さないんだと思いますよ。そういう文化がある。だって、そもそもで考えたら、政府が大量の資産を持つ必要なんてないもん。むしろ国や政府が際限なく大きくなっていくことに対して、欧米では嫌悪感のほうが強いと思う。


高橋 日本ってね、政府資産のGDP比が130%ぐらいあるの。他の先進国に確認したんだけど、20%ぐらいが普通だった。いかに飛び抜けて多いかわかるよね
 海外の人に「なんで持ってないの?」と聞いたら、
 「そもそも政府が持つ必要ないじゃん。なんで持ってるの?」って逆に聞かれた。
そりゃ、そうだよね。政府活動するのに、そんなに資産は必要ない。


山口 財務省は「借金の額が世界的に飛び抜けている」と繰り返すけど、「世界的に飛び抜けてるのは政府資産のほうだった」というオチだ(笑)。


高橋 海外に比べて人口当たりの公務員数が少ないから、日本は大きな政府じゃないって意見があるでしょ。それはその通りなんだ。ところがね、政府資産で見ると、とんでもなく巨大な政府なの。しかも、政府資産が大きいぶん、官僚一人当たりの権限が他の先進国の何倍も大きくなるわけね。


山口 他国に比べて、日本はものすごく余裕があるわけですよ。政府資産のスリム化を迫られてないんだから。



【なぜ公務員は一緒に住むのか】


高橋 私は官邸にいたときに国の資産を売ろうとしたんだけど、無理だった。だから最近は小池百合子(東京都知事)さんに言ってる。東京都だって30兆円もの資産を持ってるんだよ。うなるように土地があるんだから、それを売れば、すぐお金はできる。役立たずの役人が囲い込むより、よっぽどいいって。


山口 首都の土地の効率的利用につながりますもんね。


高橋 だけどさあ、役人は資産売却を嫌がるんだよなあ。私ね、大蔵省で国有財産の管理をしてたこともあるの。公務員宿舎とか面倒くさくてさあ。


山口 僕ら民間の人間からすると、なんで公務員だけは一緒に住まなきゃいけないのか、意味がよくわからないんですよ。リスク管理の面でも、テポドンとか飛んできたら全滅しちゃう。むしろ分散して住むべきじゃないんですか。


高橋 普通の民間アパートや民間マンションに住んだらいいよねえ。それで住宅手当を出せば。あるいは、公務員宿舎の土地をすべて民間に売って、そこに高いビルを建ててもらい、その一部分だけ借りるとかさ。


都内の一等地に3階建ての公務員宿舎なんて、非効率の極みでしょう。民間が高層ビルを建てて、テナントとかコンビニとか入れるほうが、住人以外の人も喜ぶじゃない。



山口 そう思いますよ。それに、もうひとつ大きなプラスがある。そこにビルを建てた民間企業が儲かれば、税金がとれる。財政にも寄与するわけです。民間に放出することで、民間だけでなく政府だって得をするわけです。役人が抱え込むなんて、非効率の極みでしかない。


高橋 だけど、資産売却すると言ったら、猛反発を食らうのよ。官邸にいたときは少し実現しただけで、ほとんど何もできなかった。


山口 どうしてそこまで公務員宿舎に固執するんですか?


高橋 私にもわからないよ。だけど、公務員宿舎を管理する人間だけで2000人ぐらいいるから、その人たちの雇用の問題になってきちゃうのかな。


政府のスリム化


山口 日本って、そういう不思議な話が多いですよね。いま僕は岩手県を活動の拠点にしてますけど、盛岡市とか行ったら、もっとひどいんですよ。公民館とかコンサートホールとか、みんな市が抱え込んでる。


「なんで行政がやる必要があるんだ。民間に売り払ったほうが効率的だろう」と意見しても、意味がわからないみたいです。どうしても役人がやりたいみたいなんだ。


高橋 国でも地方でも、政府の借金を減らすには、子会社の民営化がいちばん簡単なやり方なんだ。ところが、すっごい抵抗されるの。


大阪市だって、橋下徹(前大阪市長)さんがあれだけ水道局や市営地下鉄を民営化しようとしたけど、いまだに実現しないでしょう。私も東京の営団地下鉄の民営化に関わったけど、大変だった。




山口 あのときは猛反対でしたよね。営団地下鉄も国鉄もそうだけど、「民営化すると安全性が保てない」とか言うやつがいて、新聞もそのまま書き立てた。だけど、結局、何の問題も起きなかったじゃないか。むしろ稼ぐインセンティブが生まれたぶん、サービスは向上してますよ。


高橋 民営化って手法はすごくいいんだ。成功率も高いのね。民営化は何個かやったけど、基本的に失敗してないよ。


山口 郵政民営化は高橋さんの仕事ですよね。


高橋 小泉政権のとき、政策スタッフとしてね。当時、小泉さんにどうして郵政民営化にこだわるのか質問しても、いまひとつ理由がよくわかんなかったんだよ。そこで、郵政解散選挙(2005年)のときに考えたんだ。


郵政って一業界の問題を、選挙の争点にするわけにいかない。「政府のスリム化」ってストーリーにしちゃおうと。郵政民営化は始まりにすぎない。他の分野でも同じことをやれば、日本政府はどんどんスリム化するんだって。ちょっと盛っちゃったね(笑)。


山口 その後の展開を見ると、そう甘くはなかったですね。いわゆる抵抗勢力が立ちはだかった。


高橋 私自身、そんなに期待はしてなかったよ。だって、小泉さんが常軌を逸したように行動したから郵政民営化だけは実現したけど、同じような「変人」ってそうそういないじゃない。あのすさまじい抵抗をはねつけるパワーを持った政治家がいなきゃ、次から次へ民営化なんて無理だよ。


山口 民主党政権の誕生で、流れが反転した。郵政は半民営化みたいになっちゃったし、政策金融機関の民営化も潰されちゃいましたもんね。日本政策投資銀行や商工中金の民営化とか。


高橋 政策金融機関は民営化の法律まで出したんだけどねえ。郵政と政策金融ってコインの裏表なの。国の財政投融資システムのなかで、調達サイドが郵政で、運用サイドが政策金融だった。だから一緒に改革しようと思ったのに、どちらも阻まれた。民主党は財務省の言いなりだったから、まんまとやられちゃった。


山口 郵政は総務省だけの利害だけど、政策金融機関となると財務省、経産省、農水省とか、利害関係者が増えてくる。それぞれの省庁から天下ってるわけだから、民営化はより難しいミッションになる。


高橋 とにかく抵抗が強いよ。国の持ってる固定資産を証券化して売るってアイデアも経済財政諮問会議に上げて、専門委員会まで作ったんだけど、潰された。たいした話じゃないよ。所有権が変わるだけで、日常業務に影響は出ないんだから。それでも猛反対される。


そのとき確信したね。借金が大変だなんて嘘っぱちだと。大変だったら、真っ先に資産を売ってるよ。「借金返済は天下り先を守るためだ」なんて、日本で私しか言ってないけど、内部にいたからこそ見えるものがあるんだよ。


暴落なき暴落とは?


山口 しっかし、日本国債が暴落するって話も、なかなか消えませんねえ。そりゃ財政破綻すれば暴落する。それは間違いない。だけど、現在のデータから見て、財政破綻自体が起こりえないだろう、って話なのに。


高橋 たとえば藤巻健史さんって、人間的にはいい人だけど、破綻の意見はひどい。だって、あの人、20年以上、暴落するって言い続けてない? お経のように繰り返し唱えてるよな。


山口 僕、同じ業界にいたので1980年代から知ってるけど、同じことを言い続けてますよ。他にもハイパーインフレで超円安が来るとか。


高橋 デフレを脱却できるかどうかって努力をしているときに、いきなり穏やかなインフレをスキップしてハイパーインフレだもんなあ。でも、現実はマイナス金利になっちゃった。国債価格は暴落するどころか、高値で推移してる。まったく逆の展開になっちゃってるよね。



国会に参考人で呼ばれたとき、辛抱できなくなって、「藤巻さん、そうおっしゃるけど、二十数年間、ずっと外れてるんですけど、どうなんですか?」と思わず聞いちゃった(笑)。


山口 逆質問しちゃった(笑)。


高橋 もう国会が大爆笑になってさ。そしたら彼ね、「たしかに私はずっと外れてます」って認めちゃったんだよ。「当たらないんだけど、言わざるをえない」みたいなこと言ってたな。もう意味わかんない。議事録に載ってるよ。だけど、国債暴落論者って、どんどん新手が現れるね。読者もホラーを読む感覚で、日本経済の崩壊ドラマに震え上がってるんじゃないか。


山口 読者はそういう刺激を求めるんだと思いますよ。僕も最初の本(『なぜ日本経済は世界最強と言われるのか』)を出すときに、編集者から「日本国債は暴落しないなんて意見は売れないんですよ」と言われましたもん。大手出版社からは企画を軒並み却下された。


結果的にはその本が10万部売れたから、暴落しないって意見でも出せるようになりましたけど。




【未達はしょっちゅう起きている】


高橋 読者が現場をよく知らないから、ホラーが成立するんだろうな。
 幸田真音(まいん)さんの小説以来、未達(国債が売れ残ること)が起きたら国債が大暴落するってイメージができちゃったけど、未達なんてしょっちゅう起きてるよ。


(管理人より 幸田真音の小説は話題になったので目を通したことがあるが、あまり記憶に残っていない。理由はリアルの世界をみていたから。あまりに小説ぽいので興味が続かなかったのだと思う)
 


私は大蔵省国債課の企画担当補佐を1年やってたの。国債の入札を取り仕切る仕事ね。たった1年間でも何回か未達があるよ。


山口 僕は入札する側だったけど、2~3回は未達を見てますね。


高橋 国債の未達なんて海外でも当たり前だし、パニックになるような話じゃない。もちろん、毎回毎回、未達なら大問題だよ。だけど、入札は毎週やってるから、1年間に50~60回はあるんだ。そのうち何回か未達になっても、次で取り返せばいいんだよ。


5回ぐらいなら、何の問題もないんじゃないか? 発行する側は国の資金繰りをちゃんと見ながらやってるんだから、資金ショートは起こらない。


山口 未達って、応札の多寡の問題だけじゃないんですよね。応札が多くても未達になるケースがある。だって、極端な値段で入れるやつもいますからね。「当たったらラッキー」ぐらいの感覚で激安の指値をしておく。


高橋 そういうのを我々は「おちょくり札」と呼んでたの。「あわよくば」という指値。だけど、そんなの拾わないよ。資金調達コストが上がっちゃうじゃない。例えば1兆円を調達したくて入札を行ったとするでしょ。高い指値から順番に取っていって、9000億円ぶんは確保できた。


だけど、それ以下の指値はおちょくり札だった場合、無理して1兆円は調達しない。9000億円で止めておく。残りの1000億円はまた来週、調達すりゃいいんだから。未達といっても、意識的にやってるわけ。


山口 財務省の担当者によっては、おちょくり札を取る人もいる。そのときは入札価格の値幅がグーンと広がっちゃう。業界では「テールが流れる」と呼びますけど。すると、翌日の日経新聞が「テールが流れたのは、国債のニーズが落ちたからだ」って書く。日本国債を買いたい人が激減したから、そこまで安売りしないと資金が調達できないと。いやいや、そうじゃないだろう(笑)。


高橋 つねに何%かはおちょくり札だからね。拾わなきゃいいんだよ、ふざけた札は。業者の側でも確信犯でやるわけでしょう。


山口 入札でハジかれても「やっぱりそうだな」ぐらいの感想しかないですよ。


国債のリアルを知らない


高橋 みんな未達にばっかり注目するけど、重要なのは調達コストを下げるほうなんだよ。安くお金を調達できるなら、未達になっても問題はない。私がやった1年間に金利で1000億円ぐらいは稼いだもん。


まあ、国債の金利は全体で10兆円ぐらい払ってるから、1%ぐらいなんだけどね。それでも、やらないよりは財政に寄与する。こういう工夫もしないで財政危機だと言ってる財務官僚は多いと思うよ。


山口 メディアの人は、株式のことは比較的、知ってるんですよ。だけど、債券になると、もう全然知らない。2016年に三菱東京UFJ銀行がプライマリーディーラーの資格を返上したときも、まるで「もう誰も国債を買わなくなる」みたいな報道でしたもんね。そういう問題じゃないのに。


高橋 プライマリーディーラーって、一定の応札義務と引き換えに、財務省から情報がもらえる。それだけの話なの。あの資格がなくたって入札に参加することはできるんだ。たいした話じゃないよ。


山口 そもそも銀行が国債で稼ぐというのもねえ。


高橋 そうそう。民間企業に融資して稼ぐのが、銀行の本来の仕事なんだ。これまでデフレが長く続いたから、国債の売買で儲けられただけの話で。マイナス金利で国債投資の魅力がなくなり、本来の業務に戻ろうってことならば、むしろ日本経済にとって喜ぶべき話題だと思うよ。


少なくとも「国債が売れなくなる」なんて話じゃない。売れないなんてありえない


山口 僕が国債をやってたとき、すごく印象に残ってるのは、大蔵省の人から「お客さん」って呼ばれてたんですよ。大蔵省から下にも置かない扱いを受けるって、あまり経験ないじゃないですか。


高橋 国債を買ってくれるから、お客さんなんだ。私のときは国債課も予算を持ってて、プライマリーディーラーを接待できたんだよ。金融機関って普段は大蔵省を接待しなきゃいけない立場でしょう。だけど、国債やってる人たちだけは、逆に接待してもらえる。みんなものすごく喜んでたな。


山口 民間としては情報が欲しいんですよね。だから、大蔵省と接触したい。


高橋 だけどさあ、「入札の足切り価格(最低落札価格)を教えてください」って頼まれたことがあって(笑)。そんなの教えるわけねえだろう。あのときだけはのけぞったね。


まあ、こっちも金融機関のポジションを聞くんだ。けっこう正直に話してくれるんだよ。それで発行のタイミングを見計らう。普通の役人は定期的に国債を出すんだけど、私はもっと気まぐれにやった。資金繰りもチェックしながら、どのぐらい足りないかを考えて、適当なタイミングで出す。


山口 それって、けっこう画期的じゃないですか?




高橋 アメリカと似たやり方なんだけど、斬新だと言われたな。長期国債を出すときは、タイミングを見計らってドンといった。よくわからないときは短期国債をちょこちょこ出して、しのいだ。資金繰りを見ながら、現金が手元に少ししかないように工夫して。


山口 国が現金を持っていても仕方ないですもんね。


高橋 仕方ないよ。必要なときだけ国債を出せばいい。バカな担当者は年度の最初にドカンと長期国債を出すんだけど、そんなに現金は要らないんだ。だから、さっきの立食パーティなんかで、業者の手の内を探るわけ。すると「そろそろ出してくれませんかあ。長期国債がないと商売にならないんですよ」なんて声が出てくる。


そういうタイミングで出すと、もう鯉のエサみたいにパクンと食い付いてくる。みんなもう待ちに待ってるからね。そういう経験をしてるだけに、いまでも「国債が売れなくなるなんて、ありえねえ」と思ってるよ。


山口 特に日銀が大量に買うようになってから、国債は品薄ですしね。もはや発行残高の4割を日銀が抱え込んでるわけで、国債は奪い合いになってる。こんな状況で、いったいどうやって暴落するんだ。


高橋 暴落しねえよ。金融機関は欲しがってるんだもん。


山口 僕もよく言うんです。「破産しそうなやつから金を貸してくれと頼まれたら、リスクに見合うだけの高い金利をとらないか?」って。


いま10年物の日本国債の金利は0・1%を切ってるでしょ。もし財政破綻が目前に迫ってるなら、こんなタダ同然の金利で誰も金を貸してくれませんよ。マーケットの誰一人、財政破綻も国債暴落も想定していない証拠です。アメリカ国債ですら、2%台なかばの金利がついているわけですからね。


高橋 ブラジル国債や南アフリカ国債が個人投資家に人気があるのは、金利がすごく高いからでしょ。ブラジルや南アフリカといった国は、それだけ高い金利を払わないと、誰もお金を貸してくれないわけだよ。日本はその逆と考えればいい。


山口 そうなんです。それだけリスクがあるということを、みんな意識していない。ああいう投資商品はおすすめできませんね。いずれにせよ、日本は高い金利をつけなくても、みんなお金を貸してくれるほどリスクが低いということですよ。


御用マスコミを作るのは簡単


高橋 財政破綻するほど危機的な状況じゃないのに、消費増税を強要するのは、天下り先を守るためだ―。なかなか理解してもらえないんだけど、政治家には直観的に理解できる人がいて、それが安倍さんなんだ。だって、消費増税に関する財務省の説明が完全に間違ってたじゃない。


山口 消費税を5%から8%に上げてもまったく影響はない、と言ってましたもんね。


高橋 私もあのとき安倍さんから聞かれたんで、ちゃんと計算して、「2014年度の経済成長はマイナス0・5%になりますよ」と予想したんだ。消費関数を使って、可処分所得がどのぐらい減るのか、簡単に計算できるから。


だけど、周囲は財務省の息のかかったやつばかりじゃない。多勢に無勢だった。戦っても時間の無駄だと思ったから、「まあ、結果を見てください」と言ったの。


山口 僕も日経新聞のエコノミスト100人アンケートに選ばれたんだけど、消費増税の影響がないという人が99人でした。マイナスの影響があると言ったのは僕だけで、そのあとボコボコにされましたよ。だけど、結果を見てみろと言いたい。消費増税のせいで、日本経済は失速しちゃったじゃねえか。


高橋 世の中、デタラメな人が多いんだよな。だけどさ、政治家って面白くて、彼らは結果を見るんだよね。安倍さんも「政治家は理論がわからないけど、結果ならわかる。当たらない人の話は聞かなくなるし、より当たる人の話を聞くしかない」って。


消費増税でデタラメ言った財務省の意見は、もう聞かなくなっちゃったの。政治家にとって当たるか当たらないかはすごく重要なのね。ある意味、気持ちがいいよ。


山口 予想を外した人は責任をとらない。日本のマスコミはひどいですよ。ちゃんと調べて、考えて書くということをしない。最初から書くことが決まっていて、その意見に合うコメンテーターを当てはめてるだけでしょう。「日経新聞で本当のことが書いてあるのはスポーツ欄だけ」って、よく言ってるんですよ。


高橋 私も「日経読むとバカになる」と言ってる。取材にさえ来ないで、こっちが言ってもないことを書くからな。信用できない。まあ、財政研究会(財務省の記者クラブ)の元キャップが社長などの幹部をやってるんだから、財務省に逆らうとは思えないけどね。


だけど、日経だけじゃないんだよ。新聞全体がひどい。自分たちは軽減税率を適用してもらって、消費増税のサポーターになっちゃった。大新聞の社説を見てても、明らかに財務官僚のレクチャーを受けてるのがわかる。


山口 自分で一次資料に当たらないんですよね。




高橋 政府の予算書なんていったら数千ページもある。大変だけど、それを読むのがマスコミの仕事のはずだよね。ところが、読むのが面倒だから、官僚がマスコミ用にまとめた資料を右から左で報道しちゃう。


山口 そういう資料に頼るようになると、財務省に依存していく。記者クラブって制度も問題ですよね。記者クラブから締め出されることを恐れて、役人が嫌がる記事を書けなくなっちゃう。


高橋 告白するとね、大蔵省にいたときマスコミ対策をやってたことがあるの。自分のほうからマスコミ各社へ出向いて、「内部資料」と称するものを渡せば、イチコロなんだよ。携帯番号とか教えてあげたら、もう舞い上がっちゃうの(笑)。御用マスコミなんて簡単に作れちゃうわけ。


思惑通りに記事を書かせて情報操作するなんて、官僚にとってはお手のものなんだよ。だから、各紙が同じ記事を書いてるときは、裏で官僚が暗躍してると勘ぐったほうがいい。


サイコロ振るのと変わらない


山口 御用学者って人もいますね。


高橋 政府の審議会って、そもそも役所と反対の意見の学者は呼ばないでしょ。呼ばれる人って、審議会に出ることで「箔が付く」って感覚の人も多い。役人から情報や理論を提供されて、「いやあ、勉強になりました」って、本気で喜んでる人もいるんだよな。


その情報を基に論文を書いたりしてさあ。報酬も悪くないし、そういう御用学者は役所の言いなりになるよ。


山口 エコノミストと称する人たちもひどいですよね。エコノミストが経済予測をするのと、競馬記者が競馬の結果を予測するのと同じレベルですから。


高橋 もともと内閣府が始めて、いまは日本経済研究センターがやってるESPフォーキャスト調査ってあるじゃない。民間エコノミスト40人前後が経済予測をするやつで、あれに選ばれるのがステータスらしいんだけどさ。私、一回、彼らの予測を分析したことがあるんだ。


そうしたら、彼らの6ヵ月先の予測と、サイコロを振って決めたのと、統計的には識別できなかった。サイコロを振ってるのと変わんないわけ。もちろん、当たるときもあるんだけど、それは翌日に統計が発表になるケースだけ。そりゃ、関係者から情報を仕入れてるから当たって当然だろう(笑)。ズルイよ。


山口 それが日本のトップエコノミストと呼ばれてるわけです。読者はおそらく「素人の自分より、プロのほうがよくわかってるに違いない」と思ってるでしょうけど、こと経済予測に関してはそうじゃない。


1980年代にゴールドマン・サックスが、トレーディングの戦略がどこまで正しいか検証したんです。そしたら香港の風水師の予測のほうが当たっていた(笑)。それでゴールドマンは一時、トレーディングデスクを閉じたんですよ。プロと言っても、そのレベルなんです。


高橋 エコノミストだって、数字が苦手な人が多いんだ。日本の大学で経済学部は文系でしょう。私の印象では経済学って工学に近い分野で、理数系の素養が必須なわけ。実際、バーナンキをはじめ、アメリカの経済学者たちって数学のセンスがいいよ。


日本のエコノミストが予測を外すのも、日本の経済学者がノーベル賞をとれないのも、数学が苦手だからだと思う。


山口 それでもテレビに出てきて、堂々とコメントしてますけどねえ。


髙橋 洋一(たかはし・よういち)/経済学者。1955年生まれ東京大学経済学部卒業後、大蔵省入省。小泉内閣で大臣補佐官、安倍内閣で内閣参事官を務めた。2008年退官後は「霞ヶ関の埋蔵金」そ指摘するなど官僚の不都合な真実を明かし続ける。




ぐっちーさん/本名:やまぐち・まさひろ。投資銀行家。1960年生まれ、慶應大学経済学部卒業後、丸紅を経てウォールストリートへ。モルガン・スタンレー、ABNアムロ等を経て投資銀行設立。ぐっちーさんのペンネームで健筆をふるう。『ぐっちーさんの本当は凄い日本経済入門』がベストセラーに







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【加計学園 行政は歪められたのか(上)】
新設認めぬ「石破4条件」は獣医師会の政界工作の「成果」だった! 民主党政権でも献金攻勢…



「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました…」



 平成27年9月9日。地方創生担当相の石破茂は衆院議員会館の自室で静かにこう語った。向き合っていたのは元衆院議員で政治団体「日本獣医師政治連盟」委員長の北村直人と、公益社団法人「日本獣医師会」会長で自民党福岡県連会長の蔵内勇夫の2人。石破の言葉に、北村は安堵の表情を浮かべながらも「まだまだ油断できないぞ」と自分に言い聞かせた。



 石破の言った「文言」とは、会談に先立つ6月30日、安倍晋三内閣が閣議決定した「日本再興戦略」に盛り込まれた獣医学部新設に関わる4条件を指す。



 具体的には(1)現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化(2)ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らか(3)既存の大学・学部では対応が困難な場合(4)近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討-の4つ。要するに、新たな分野のニーズがある▽既存の大学で対応できない▽教授陣・施設が充実している▽獣医師の需給バランスに悪影響を与えない-という内容だ。


 このいわゆる「石破4条件」により獣医学部新設は極めて困難となった。獣医師の質の低下などを理由に獣医学部新設に猛反対してきた獣医師会にとっては「満額回答」だといえる。北村は獣医師会の会議で「(4条件という)大きな壁を作ってもらった」と胸を張った。



   × × ×



 愛媛県と今治市が学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部誘致を計画したのは平成19年に遡る。相次ぐ家畜伝染病に悩まされ、「獣医師が足りない」という畜産農家の切なる声を受けての動きだった。



 だが、構造改革特区に何度申請しても却下された。ようやく構想が動き出したのは、21年9月に民主党の鳩山由紀夫が首相となった後だった。



 民主党愛媛県連副代表で衆院議員の白石洋一は、民主党幹事長室で「今治市に獣医学部の枠を取れないか」と陳情した。幹事長の小沢一郎は自民党から業界団体をいかに引きはがすかに腐心していた。資金力のある獣医師会を揺さぶるにはちょうどよい案件に映ったのだろう。22年3月に特区申請は「対応不可」から「実現に向けて検討」に格上げされた。



 慌てた獣医師会は、民主党衆院議員、城島光力と接触し、城島を会長とする「民主党獣医師問題議員連盟」を発足させた。22年7月の参院選では、民主党の比例代表の候補1人を推薦した。民主党議員に対する政治献金もこの時期に急激に増えている。



 ところが、その後の民主党政権の混乱により、またも構想は放置された。それがようやく動き出したのは24年12月、自民党総裁の安倍晋三が首相に返り咲いてからだった。



   × × ×



 安倍は25年12月、「岩盤規制をドリルで破る」というスローガンを打ち出し、構造改革特区を国家戦略特区に衣替えした。27年6月、愛媛県と今治市が16回目の申請をすると、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)が実現に向け一気に動き出した。



 絶体絶命に追い込まれた獣医師会がすがったのはまたもや「政治力」だった。



 北村と石破は昭和61年の初当選同期。しかも政治改革などで行動をともにした旧知の間柄だ。日本獣医師政治連盟は自民党が政権奪還した直後の平成24年12月27日、幹事長に就任した石破の「自民党鳥取県第一選挙区支部」に100万円を献金している。



 蔵内も、長く福岡県議を務め、副総理兼財務相で自民党獣医師問題議連会長の麻生太郎や、元自民党幹事長の古賀誠ら政界に太いパイプを有する。



 北村らは石破らの説得工作を続けた結果、4条件の盛り込みに成功した。



 実は北村には成功体験があった。26年7月、新潟市が国家戦略特区に獣医学部新設を申請した際、北村は「獣医学部を新設し、経済効果が出るには10年かかる。特区は2、3年で効果が出ないと意味がない」と石破を説き伏せた。石破も「特区にはなじまないよな」と同調し、新潟市の申請はほどなく却下された。



 今治市の案件も4条件の設定により、宙に浮いたかに見えた。再び動きが急加速したのは、28年8月の内閣改造で、地方創生担当相が石破から山本幸三に代わった後だった。



   × × ×



 獣医学部は、昭和41年に北里大が創設以降、半世紀も新設されなかった。定員も54年から930人のまま変わっていない。この異様な硬直性の背景には、獣医師会の絶え間ない政界工作があった。「石破4条件」もその“成果”の一つだといえる。石破の父、二朗は元内務官僚で鳥取県知事を務め、鳥取大の獣医学科設置に尽力したことで知られる。その息子が獣医学部新設阻止に動いたとすれば、皮肉な話だといえる。



石破は、加計学園の獣医学部新設について「(4条件の)4つが証明されればやればよい。されなければやってはいけない。非常に単純なことだ」と事あるごとに語ってきた。ところが「石破4条件」と言われ始めると「私が勝手に作ったものじゃない。内閣として閣議決定した」と内閣に責任をなすりつけるようになった。



 一方、石破は産経新聞の取材に文書で回答し、新潟市の獣医学部新設申請について「全く存じ上げない」、獣医師会からの4条件盛り込み要請について「そのような要請はなかった」、平成27年9月9日の発言についても「そのような事実はなかった」といずれも全面否定した。



日大総長「加計にろくな教育できっこない」 愛媛知事「じゃあ、あなた作ってくれるか?」


 



 第1次安倍晋三政権当時の平成19年2月。東京・赤坂の料亭「佐藤」で、日本獣医師会顧問で元衆院議員の北村直人は、学校法人「加計学園」(岡山市)理事長の加計孝太郎と向き合っていた。



 「愛媛で獣医の大学を作りたいんですよ。ぜひ協力してくれませんか?」



 加計がこう切り出すと、北村は強い口調で「なぜそんなことを言い出すんですか?」と聞き返した。



 加計が「息子の鹿児島大獣医学科の入学式に行き、設備をみたら20億~30億円でできそうなんですよ」と説明すると、北村は怒気をはらんだ声でこう説いた。



 「そんな動機で獣医学科を作りたいなんて、とんでもない話だ。獣医学部創設には500億円はかかりますよ。教育を金もうけに使われたらたまらない。やめた方がいい!」



 さらに北村が「親しい政治家はいるんですか」と問うと、加計はこう答えた。



 「強いていえば安倍首相ですが…」



 北村の脳裏に、安倍への疑念が刻まれた瞬間だった。北村は今も「全ては加計学園ありきなんだ」と息巻く。



 だが、愛媛県今治市に加計学園が運営する岡山理科大の獣医学部を新設する構想は、安倍と加計の親交とは全く無関係の切なる地元事情から始まっていた。


昭和50年、今治市は高等教育機関を誘致する学園都市構想を打ち出した。タオル産業の衰退などにより、人口減が続く地域を活性化させることが目的だった。松山大や東海大などの名も挙がったが、いずれも誘致には至らなかった。



 加計学園の名前が浮上したのは平成17年の正月だった。今治市選出の愛媛県議、本宮勇は市内の友人宅で、小学校から高校まで同級生だった加計学園事務局長と久々に再会した。本宮はこう水を向けた。



 「今治市で大学を誘致しているがどこも来てくれないんだ。お前のところの大学が来てくれないか?」



 だが、事務局長は「少子化の時代に地方に大学を進出させるのは難しい」と首を縦に振らなかった。それでも本宮はあきらめず、その後も説得を続けた。事務局長はついに根負けして「人気があり、競争率の高い獣医学部だったら考えてもいいよ」と応じた。



 同じ頃、知事の加戸守行は県内の公務員獣医師の不足に頭を悩ませていた。



 11年の知事就任後、鳥インフルエンザなどの家畜伝染病が相次いだ。22年に口蹄疫が発生した際には各港で検疫態勢をとり、四国への侵入は水際で阻止したが、獣医師たちに不眠不休の対応を強いねばならなかった。




 そんな中、本宮がもたらした加計学園による獣医学部新設の話は願ってもない朗報だった。加戸は「地域活性化と公務員獣医師確保ができ、一石二鳥じゃないか」と小躍りした。



 加戸の大号令の下で愛媛県と今治市は獣医学部新設に向け、タッグを組んだ。目をつけたのが、元首相の小泉純一郎が肝煎りで創設した構造改革特区だった。



 愛媛県と今治市は19年に構造改革特区に獣医学部新設を申請したが、あっさり却下された。農林水産省は「地域・分野に偏在はあるが、獣医師は足りている」とにべもなく、文部科学省は、歯科医師や獣医師に関する大学設置を認めないとする「15年文科省告示」を盾に聞く耳さえ持たなかった。




× × ×



 愛媛県と今治市はそれでもあきらめず、毎年のように特区申請を続けた。



 これに業を煮やしたのか、北村は22年春、獣医師会の権威で日大総長の酒井健夫と連れだって愛媛県庁の知事室に乗り込んだ。



 「獣医学部を作るのなんかやめた方がいい。公務員獣医師の待遇をよくしたり、愛媛県出身の学生に奨学金を出したりした方が安上がりですよ」



 北村がこう言うと、酒井は「奨学金をつけて東京まで学生を送ってくれたら日大で立派に育てて愛媛にお返ししますよ」と合いの手を入れた。



加戸は「こっちは手当たり次第、獣医師を採用しても足りないんだ」と説明したが、2人は納得しない。酒井は「加計学園が獣医学部を作っても、どうせろくな教育はできっこないですよ」と言い放った。これにカチンときた加戸は怒りを隠さずこう迫った。



 「こっちは別に加計学園でなくてもいいんだ。じゃあ、あなたのところで愛媛に第2獣医学部を作ってくれるか?」



 酒井と北村は押し黙ったままだった。




× × ×



 加戸が獣医学部新設にこだわったのは、獣医学部・学科が東日本8割、西日本2割と偏在しているからだ。加戸は旧文部省出身で官房長まで務めた人物だ。文科省と日大、そして獣医師会の密接な関係は十分承知しているだけに、文科省や獣医師会の対応には怒りが収まらない。



 「(現在のように)定員を水増しすれば、少ない教授で安上がりな授業ができる。ドル箱じゃないか。自分たちの大学で定員を増やすのはよいが、他の大学にはやらせない。商売敵ができるとおまんまの食い上げになるからじゃないのか」



 第2次安倍内閣の国家戦略特区により、ようやく風穴が開き、10年越しの悲願がかなった。にもかかわらず、獣医学部新設にからみ、あたかも不正があったかのように報じられるのは我慢できない。



 「『加計学園ありき』と言われているが、愛媛県と今治市は10年以上前から『加計学園ありき』でやってきたんだ。本質の議論がなされないまま、獣医学部がおもちゃにされるのは甚だ残念だ」



 文科省から流出したとされる「首相の意向」などと記された文書に関しても加戸は「安倍さんと加計学園理事長が友達だと知っていたら、直訴してでも10年前に獣医学部を作ってもらっていたよ」と一笑に付す。



 「行政が歪められたのではない。歪められていた行政が正されたんだ」



◆ ◆ ◆


産経ニュース


橋下徹氏が有田芳生参院議員に激怒 有田氏、蓮舫氏の二重国籍問題は「人権侵害」 橋下氏の出自暴露は「面白い」 「ダブルスタンダードだ」「有田、早く辞職しろ」



 民進党の有田芳生(ありた・よしふ)参院議員(65)に日本維新の会の橋下徹法律顧問(48)=前大阪市長=がインターネット上などでかみついている。



 民進党の蓮舫代表(49)が自身の戸籍謄本の一部など関係書類を公開した件で、有田氏が蓮舫氏に公開を求めた人々を「差別だ」として非難したことを、橋下氏は自分の出自が週刊朝日に報じられた際には有田氏が「面白い」と言っていたと指摘し、「自分の嫌いな相手なら面白く、自分の所属する党の代表なら人権問題にするのか」として、有田氏の姿勢を「ダブルスタンダード」と激しく批判した。



 有田氏は14日、言論ニュースサイト「リテラ」に緊急寄稿。「複数の議員がツイッターで(蓮舫氏の)戸籍提出に賛同する意見を表明した」ことを「蓮舫代表に個人情報の開示を求めるのは、出自による差別を禁止している憲法第14条や人種差別撤廃条約の趣旨に反する差別そのものである」と指摘。



 さらに昭和50年に起きた「部落地名総鑑事件」を引き合いに、「(この)教訓から、企業が採用選考のとき、応募者に戸籍の提出や本籍地の確認を求めることが禁止されるようになった。蓮舫代表に戸籍の開示を求めることは、こうした人権擁護の歴史に真っ向から反するものだ」として、蓮舫氏に戸籍の開示を求めることと、部落差別を同質のものと指摘した。



これに対し、橋下氏は19日に「プレジデントオンライン」(プレジデント社)に「有田芳生の人権派面は偽物だ!」と題して寄稿し、有田氏を「こいつだけはほんと許せないね」と罵倒。



 理由として、橋下氏の出自問題が週刊朝日に掲載された平成24年10月、有田氏が「これは面白い」とツイートし、橋下氏が猛反撃した際、「よく分からん言い訳」をしたと指摘。一方で蓮舫氏の戸籍開示について、人権を盾に開示を許すな、と主張したことを「典型的なダブルスタンダード」とかみついた。



 「有田は自分が嫌いな相手(僕)の出自が公になることは面白く、自分の所属する党の代表の、ちょっとした戸籍情報が開示されることはプライバシー侵害になり、人権問題にもなるから許されないと言うんだ」(原文ママ、橋下氏の寄稿から)とまで指摘した。



 それでも怒りが収まらないのか、自身のツイッターで「戸籍の開示は差別助長に繋がる!だって? 自称人権派は恥ずかしげもなくよく言うよな。俺は出自について散々報じられたけど、自称人権派は誰もその報道を批判しなかった。あの報道に比べれば蓮舫さんの戸籍開示なんてどうってことないこと」と投稿した。



 このツイートには、有田氏の24年10月の「佐野眞一『ハシシタ 救世主か衆愚の王か』(週刊朝日)がすこぶる面白い。(中略)橋下市長は朝日新聞の取材をさっそく拒否。佐野さんの戦術にまんまとはまってしまったのは、その性格を知らない無謀反応だ」などというツイートを添えて、「参議院議員有田芳生が僕の出自を面白がっている証拠。それが今、蓮舫さんの戸籍開示が差別に繋がるだって。有田、早く辞職しろ。自称人権派は有田を責めないのか? 」と怒りのこもったツイートを立て続けに投稿した。



 週刊朝日の当該記事に橋下氏は「遺伝子で性格が決まるとする内容」だと激しく反発し、週刊朝日を発行する朝日新聞出版と佐野氏を提訴。27年2月、橋下氏の主張を認める形で和解が成立した。(WEB編集チーム)



◆ ◆ おまけ◆ ◆
ネバーエンディング・ストーリー テーマ曲 The Neverending Story - Limahl


[Top Gun] Danger Zone 歌詞・日本語訳付き




F-22ラプター ありえない離陸機動