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★プライムニュース2017/2/28  遠のく財政健全化目標 急浮上『シムズ理論』 藤井聡、小幡績(若干書き起こしメモ)

 遠のく財政健全化目標 急浮上『シムズ理論』
 ゲスト
藤井聡 内閣官房参与 京都大学大学院工学研究科教授
佐藤主光 一橋大学大学院経済学研究科教授
小幡績 慶応義塾大学大学院経営管理研究科准教授


 プライマリーバランス試算悪化 2020年度目標達成困難に
 
秋元キャスター「2020年度に、基礎的財政収支、プライマリーバランス(PB)を黒字化するという目標はそもそも2010年の菅内閣で決定し、現在に受け継がれています。しかし、内閣府が先月25日に発表したグラフ見ますと、経済成長のグラフなのですが、2009年に下がっていたリーマンショックの影響以来、持ち直してはいるのですけれども、2019年度以降、名目3%以上経済成長が実現した場合、赤のグラフですが、その場合でも2020年度のプライマリーバランスは対GDP(国内総生産)比でマイナス1.4%と、8兆3000億円の赤字になるという中長期の経済財政に関する試算が公表されました。まずは藤井さんに聞きます、この2020年の財政健全化目標の達成というのは困難になったと見たらいいでしょうか?」


藤井氏「これは当然ながら、まだ状況がどうなるかわからないので、わからないとしか、現在は申し上げられないのですが、ここで是非、皆さんにご理解いただきたいのは、財政健全化目標とはいったい何なのか。これは一般にプライマリーバランスという言葉がよく言われるわけですけれども、それは一般的に毎年のフローの目標。もう1つ、ストックの目標というのもあって、これはサンクトペテルブルクの公約と言われているような文書の中にも、しっかりと書かれているのですけれども、そこで言われているのは債務対GDP比。要するに、現在、日本はだいたい500兆円ぐらいのGDPで、債務は大雑把に1000兆円だとすると、これが2.0。この数字を安定的に引き下げていくというのが目標ですね。一般的に、理論的にはプライマリーバランスというものよりも、ストックの債務対GDP比の目標の方が大事だと。一般的にそう言われています。サンクトペテルブルクの文書にもそう書かれています。一般的には経済理論では」


反町キャスター「最初からそれをやれば良かったのではないですか?なぜプライマリーバランスを?」


藤井氏「僕はそう思います。目標として両方掲げている。プライマリーバランスを黒字化するというのは、債務対GDP比。この200%というのを引き下げて行くためにそうした方がいいと言われている中間目標ですね。まずこの構造をご理解いただきたい。財政再建というのは、債務対GDP比を引き下げることである。まず是非ご理解したうえで、なぜPBを黒字化することが必要かと言われたというのはちょっとややこしいのですけれども、金利と成長率の中身で、もし金利と成長率がイコールだったら、この前提が間違っているのですけれども、イコールだったら、PBを黒字化するしか債務対GDP比は下げられないと言われているんです。ところが、現在金利が低いです、金融緩和をやっていて。この低い状況の中では必ずしもPBを黒字化しなくても、すなわちPBが赤字のままでも当面の間は、金融政策をしっかりやって、金利が低い状況、この状況が続く間では、多少PBが赤字でも債務対GDP比が下がってきます。実際に内閣府の、ここで出されている計算の時もPBというのは、まだ赤字の状況では、2020年度はあるのですけれども、その時、既に債務対GDP比は右肩で下がってきているというグラフ、このグラフのたぶん真下か何かに、報告書に書かれています」


反町キャスター「それは日本経済が順調にGDPが拡張している、成長している前提ですよね?」


藤井氏「そうです、それさえできれば」


反町キャスター「その前提になっているのが3%成長という意味なのではないですか?3%成長するのですか?」


藤井氏「それが経済再生、それを目指すというのがアベノミクスで、安倍内閣の考え方です」


反町キャスター「どちらも怪しい前提に立っている?」


藤井氏「怪しいも何も、これはいろんな異論があると思いますけれど、簡単なことだけ申し上げると、GDPを3%、名目で成長させるというのは、たとえば、仮に乗数効果が1としても15兆円の財政政策を、そこで行えば効果は出ます、その時点で。そこに乗数効果というものを考えれば、それが徐々に拡大をしていくということが少なくとも言えます。従って3%経済成長ができないということは、未だに当然ながら、断定的には言えない」


反町キャスター「その場合、15兆円の財政出動をするために、15兆円の赤字国債を発行するかもしれないから、1000兆円が1015兆円になるわけですよね。500分の1000と515分の1015のどちらがいいのだという比較になってくる」


藤井氏「そういう比較になってくると、分母が1で、分子が2ですから、どちらも同じだけ仮に足されるとしたら減っていくんですね。分数が減っていくわけです」


佐藤教授「分子が公債、分母がGDPですよね。分母は経済成長率で増えていく。分子は何で増えていくかというと2つの要素、1つは利払い費、もう1つは基礎的財政収支、赤字です。ですから、問題なのはいかに分子のスピードを分母のスピードよりも小さくするか。その時、やり方が2つあって、まず藤井先生がおっしゃるように金利がGDPの成長率よりも低ければ、分母の方が大きくなりますね。それが1つありますね。もう1つは、基礎的財政収支の赤字を小さくすれば当然、赤字の大きさも小さくなりますので、スピードも小さくなりますので、まさに公債費、対GDP比を下げることができるということになります。では、意見の違いはどこにあるかと言うと、まさに金利と成長率のところでありまして、仮に金利成長率、昔そういう議論があるんです。経済財政諮問会議で竹中・与謝野論争、当時の竹中総務大臣と与謝野さん、経済担当大臣の間での議論があるんです、議事録に残っています。要するに、結論だけ申し上げると金利と成長率のうちもし成長率の方が高ければ、藤井先生がおっしゃった通り、プライマリーバランスは、赤字もとてつもなく赤字じゃダメですよ。ある程度の赤字は許容できます。しかし、もし基礎的、成長率の方が金利を下回るのであれば、当然のことながら、ある程度の黒字が求められるということ。これはプライマリーバランスの黒字が求められることになります」


反町キャスター「現在の日本の金利と成長率はいくつといくつですか?」


佐藤教授「現在のところは…」


反町キャスター「その目標ではなくて」


藤井氏「すでに成長率が圧倒的に高いです」


佐藤教授「成長が名目で見て2ぐらいですよね。金利がだいたい1ぐらいですから」


反町キャスター「その前提はクリアをしている?」


佐藤教授「ところが、問題は、大事なのはなぜ当面はというところが大事なんですね。内閣府の試算でも、仮に当面というのか、2020年までですけれども、暫くは確かに金利も押さえ気味だし、成長率が何とか伸びているかもしれないと。でも、もし経済成長が回復していくと、おのずから金利も上がっていくんですね。なぜかと言うと、成長が増えるということは、高まるということは民間投資も増えていく、家計の消費も増えていく。となると、おのずから資金の需給が逼迫していくので皆、お金を借りる人が増えていくということです、全体として。家を買うとか、設備投資をしますね。結果的に金利が上がるので、成長率が上がると金利が上がると。そこからは追いかけっこで、長い目で見た経験則ですけれども、申し訳ないけれども、実は金利の方がちょっと高いかなという」


反町キャスター「財政が破綻するではないですか?」


佐藤教授「長い目で見れば、ですよ」


藤井氏「そこで重要なのは、それが成長軌道に乗った時の話ですよ。成長に乗るまでは金融政策を続けていく限り、おそらくは2、3年ぐらいは金利の方が低くて、成長率が高いというのが続く」


反町キャスター「想定されるということですか?」


藤井氏「過去において、そうだったし、この金融緩和の状況で、いきなり金利が4%とか、5%になるとはちょっと考えにくいので、従って、この金利が低い現在の状況においては、PB赤字というのは理論的に許容されるんですね。その期間が仮に2、3年だとしましょう。この2、3年の間は徹底的に、たとえば、財政政策を行うことで成長率を確保して成長軌道に乗せるというアプローチは、僕は十分あるというか、それしか道がないと思う」



『シムズ理論』急浮上 政府関係者も注目
 
秋元キャスター「昨年8月、アメリカ・プリンストン大学のノーベル経済学賞の受賞者であります、クリストファー・シムズ教授が物価水準の財政理論というのを発表しまして、世界的な話題になりました。11月にはアベノミクスの理論的支柱であります浜田宏一内閣官房参与が、目から鱗が落ちたと発言したことから、日本でも一気に話題になりました。安倍総理も傾聴に値すると発言する一方、財務省は警戒感を示すなどの波紋を広げているのですが、物価水準の財政理論ですね。番組でざっくりまとめると、こういうことかなと、政府が財政再建を放棄すると企業や個人が将来の増税予測をしなくなり、お金を使うようになり、インフレが発生するということですが、小幡さん、もうちょっとわかりやすく」


小幡准教授「これはよくまとまっていて、実は景気が良くなるとか、そういうのは関係ないですよ。シムズ理論というのは景気とは無関係で、物価を上げる、あるいは物価を動かすという理論ですね」


反町キャスター「それだけに特化した理論ですね。」


小幡准教授「実はシムズ理論というか、本当は物価水準の財政理論、物価水準の理論のことで、シムズさんはその理論をやっている人の、ごく一人ですけれども」


反町キャスター「ただ、日本はほぼ完全雇用で、それなりに経済も動いていて、唯一の問題は物価が上がらないというところが、デフレだというところが、日本経済の問題点だと言ったではないですか。そうすると、日本経済に対しては、これは処方箋としてはドンピシャだということになるのですか?」


小幡准教授「だから、話題ですね。シムズさんも是非、日本でやれと。つまり、景気もいい、物価だけが…」


反町キャスター「日本でやれと?」


小幡准教授「というか、日本以外ではやれとシムズさんも言っていないという。なぜかと言うと、こんなに景気は普通なのに、物価がここまで上がらないのは日本だけなので、これはなぜか、学問的にすごく興味があるわけですね。ですから、シムズさんの言うことにも学問的にすごく興味があります」


反町キャスター「研究対象としてはおもしろいということですか?」


小幡准教授「研究対象としては実験です。間違いなく実験です。一言で言うと、要は、物価水準というのは、これまで金融政策で決まると思っていたのですけれども、そうではなくて、要は、財政黒字額で決まる。要は、財政政策で決まるよと。つまり、財政黒字を増やせば使えるお金が減るので、物価は下がりますと。財政赤字が増えれば物価が上がります。とりわけ金融政策は、いわゆる行き詰まっていると言いますか、ゼロ金利がずっと続いて、金融債政策というのは金利を下げて、刺激をして、消費が増えて景気が良くなって、その結果、インフレになるというメカニズムですけれども、それ以上、下げられないわけです。だから、無理やりいっぱい国債を買ったりしていますけれど、要は、金利が下げられないので、限界なのではないのと。金融政策に限界がある時こそ、この理論の出番です。要は、そこまで金融の効果がなければ、今度は財政政策を考えるべきだと。もう一歩言えば…」


反町キャスター「財政黒字額と書いてあるのに、財政赤字という意味でも同じことですよね。物価を上げるのだったら、財政赤字にしろという意味なのですか?」


小幡准教授「現在の日本ではですね。現状、赤字なので、黒字だったら黒字を減らせということです。あまり式は使うなと言われているのですけれども、私も学者の中では式が最も苦手な学者だとしても、これは使わざるを得ないです。この式だけは見ています。3つの要素だけですね。要は、物価水準、財政、どういうことかと言うと、これまで政府は借金をしています。これは名目の政府債務総額で出てくるので、こちら側。これがこれまでの借金の総額です。返すという議論ですよ。だから、借金棒引き理論ではないです、シムズ理論は。これまで借金した分は将来、黒字で返さなければいけないから、将来の黒字総額とこれまでの借金総額は等しいはずです、当たり前ですね。これまで借りた分とこれから返すのは一緒ですと。だけど、この借金というのは名目ですねと。額面でいくらと言っていますねと。1000兆円と言っていますね。それは、だから、実質にするには物価で割らなければいけないねと、物価で割ります」


反町キャスター「物価水準と言うと、日本だったら全然動いていなければ1.00」


小幡准教授「たとえば、1ですね。それで1000兆円、借金があるではないですか。1000兆円の黒字をこれから積み重ねなければいけないのだけれども、それを物価水準が、1が、たとえば、2になれば倍でしょう。と言うことは、上が1000兆円でも、右辺は500兆円で済むではないですか。だから、黒字は半分で済むねというところに注目しているのですが」


反町キャスター「今後の財政黒字累計学というのは、つまり、借金返済額とイコール」


小幡准教授「そうそう」


佐藤教授「(借金)返済原資ですね」


小幡准教授「それから、それを良いところ取りすると、借金を返さなくていいのではという理論に見えるのだけれども、シムズさんが言っているのは、そういうのではなくて、シムズさんがどういうことを言っているかというと人々の期待が大事だと。つまり、将来、増税をあまりしないと人々に思わせることができれば、それはどうしたら帳尻が合うかと言うと、こちらの黒字が増やさないのだったら、物価が上がって、右の実質額が減るかな。だから、人々が物価が上がると予想をすると。物価が上がってしまうのだったら、現在、買っておかなければと消費が増え、とりあえず今の物価も期待に合わせて上がるということなので、要は、物価が変化するということに注目をされているので、実質の借金額が減るということは副次的には起きますけれど、それでそう期待をするということが重要だけれども、要は、物価をどう動かすかという議論ですね」


反町キャスター「これは、要するに、答えが出ているわけではなく、思考のパターンをここに書いているということであって、別にこの式から物価をどうやって上げるという答えはここからは出てこないわけですよね。全体のバランスはこうだよと、そのバランスなわけですよね?」


小幡准教授「この式だけを考えると、黒字がシムズ理論と言われているものは、財政の黒字額が減るのだとすると、この式はずっと成り立つと信じれば、物価が上がるしかないから、皆が、物価が上がると思うということが重要ですね。期待物価をやると」


反町キャスター「そうすると、物価に日本国民が、これから物価が上がるぞと思わせるために、この方法がいいかという、この話になるわけでしょう」


小幡准教授「そうですけれど、ただ、シムズさんの言っていることを良く聞くと、このお金を使うようになるというのは、整合的なのだけれど、要は、期待が動くので、しかも、たかだか2%ですから、ある瞬間、物価が上がるのだなと思ったら、あまり景気が良くなるとか、消費が増える前に物価だけするすると上がるんですよ。2%で均衡するなんて皆、思うわけですから。消費が増えて、結果として、インフレになるというメカニズムより物価は上がるのだと皆が思えば、皆、現在のうち買っておくわけだし」


反町キャスター「物価が上がると、みんなに思わせるためにはどうしたらいいんですか」


小幡准教授「それが難しいというのが、シムズさんの講演のポイントですよね。答えになっていない。だから、批判をしているわけです。それで、日本の皆、渡部勉さんとか、東大の先生とか、皆が寄って、たかって、シムズさん、そう言うけれども、日本ではこれだけ黒田さんがやって、期待インフレ率を上げようとしても全然動かないのに、しかも、借金を、シムズさんは知っていますか、1000兆円もあって皆、借金を返すと到底思えないぐらいのところで、増税しませんと言ったところで何も期待は変わりませんよと。むしろ将来不安になって、貯金を殖やし、年金の防衛をするのではないですかといった時に、言ったんです。シムズさんが何と言ったかというと、講演、パネルディスカッションというのがあって、その時に、いやいや、これは、政治的には、確実に、人気がなくて嫌われるから、有権者みんな嫌がるだろうと。でも、インフレを上げるためには、為政者は、心を鬼にしてやるしかないのだと言ったんです」


反町キャスター「これは心を鬼にしなければできない政策ですか?」


小幡准教授「そうです」


反町キャスター「増税の方がよっぽど心を鬼にしなければいけないのではないですか?」


小幡准教授「これは専門用語ということのほどでもないのですけど、インフレタックスと言われているもので、増税、増やすか、インフレして将来、インフレになって、あなたの実質資産も減りますよと。政府の債務というのは僕らの債権ですから。あなたの貯金の実質額が減りますよと。将来、皆、すごく貧乏になりますよと。でも、増税するのは面倒くさいから、インフレで帳尻合わせちゃえということですね」


反町キャスター「ただ現在の日本の政治を見ていると、消費税上げませんとか、何とか税を上げませんとか、減税、減税ということで最近、それはさすがに言わなくなってきたような傾向もあるけれど、一時はどこかで増税をしようとすると、いや、増税をする前にやることがある、する前に減税とか、議論をやっている限りにおいては、理屈とまったく同じではないですか?」


小幡准教授「だから、シムズさんは、そこを理解していないから、日本政局がわかっていないから、増税よりも増税をやめて、インフレにすると言ったら、有権者全員が怒り狂って反対するだろうと。でも、どうしてもインフレにしたいのだったら、それしか方法がないから、やることを勧めますということですね。なぜ日本では増税、インフレにするというシムズ宣言よりも、黒字、増税の方が嫌がられるかというと、皆、インフレになると信じていないからですね。減税したらインフレになると思っていないでしょう。減税したら、その分ラッキーと思うから政治的に受け入れるだけのことで、減税した分、将来インフレになって、あなたの実質資産が減って、プラマイゼロですよと説明したら、そんなのやめてくれ、将来、不安でしょうがないわ、というのがアレですけれども、皆、そうは思わずに、いや、どうせインフレにならない。どちらかと言うと、私の意見を言っちゃうと、ここでその時に、では、日本ではいったい何が起こるのだと。だって、シムズさんが言っていることは起こりそうなことにないと、皆さん思うわけですから」


反町キャスター「財政再建を放棄した時に、日本はどうなるのですか?」


小幡准教授「まず放棄をしたら、物価が上がって帳尻が合うということですけれども、実は名目の政府債務総額がありますけれども、要は、名目の国債のマーケットプライスなわけです、時価。割り引く前の現在の時価、ここが暴落しても辻褄が合うわけです。物価が上がらなくても、長期的に言えば、政府の借金に対して、いわゆるリスクプレミアムが上がって、要は、政府の借金が返せないのではないかと、あるいは国債が下落するのではないかということで、帳尻が合うので物価が動くか、国債の信頼がやや失われるか。どちらかが起こるかと言ったら、普通に考えると、財政再建を放棄しました。国債暴落しますという方が誰もが想像つくし」


反町キャスター「インフレ発生ではなくて、国債暴落における借金チャラという破壊的なシナリオは?」


小幡准教授「チャラではないですね。なぜか、国債暴落しても、要は、国内消化もしているし、国債は今年プライマリーバランスが赤だから、国債を発行しなければいけないのではないですか。買わないですよ。その瞬間にデフォルトするので、むしろ日本みたいな状況では、シムズ氏の提言を受け入れると財政破綻する確率はどちらかと言うと、高まる方向に行くわけですね」


反町キャスター「佐藤さん、どう感じますか?」


佐藤教授「理論的にはおもしろいでしょうというのが第一ですね。先ほど、キーワードになって、このシムズ理論が働くためのキーワードになるのが期待ですね。つまり、財政再建をしない、将来、増税がないということを人々が期待する。でも、将来、財政が破綻しないということも期待していると。だから、安心して消費をしようとする。そのことが需要を増やして、物価の引き上げ要因になる。つまり、伝統的なケインズ経済学は実際に公共事業や減税を行って、人々の可処分所得を増やして、雇用を生み出して、実際に所得を増やすことによって、消費を増やすと言っているんですね。シムズ理論の場合は将来の期待。将来、増税ないぞ、という期待が今日の消費の拡大につながるという意味では、キーワードは期待です。この期待の話は前も聞きましたよねというのが金融緩和ですよね。つまり、異次元の金融緩和は人々にインフレ期待を持ってもらうですよね。では、金融政策で人々の期待は変えられたのでしょうかと言うと、先ほどの話になってしまいますが、誰もインフレが起きるとは思ってなさそうというのがここまでの結論。では、金融政策で変えられなかった人々の期待がなぜ財政で変えられるのですかという積極的論拠はたぶんないと思うんです。これこそまさに実験的。理論というのはいろいろな前提条件のもとではじめて正しいと。問われるのはシムズ理論の結果が正しいかどうかではなく、その前提条件がどこまで正しいか。細かいテクニカルなことはいろいろありますけれども、最大のポイントは人々の期待が本当に動くかどうかということが問われるし、たぶん多くの方々が、疑っているのがここの点だと思います」


反町キャスター「佐藤さんは、この形では、日本人のマインドリセットができないと考えますか?」


佐藤教授「マインドリセットができないというか、大丈夫?と思う。増税しないのは良いニュースかもしれないけど、将来の社会保障はどうなるのだろうね。そんなことを言っても、いつか増税があるぞとなると、個人からしても財布の紐は緩まないし、企業からしても投資をしようとは思わないし、マーケットも不安になるし、ということになった時に、1つあり得るのは、日本はデフォルトするかもと思って金利が上がる。ちょっとしたショックが、日本は毎年170兆円近い国債を借り換えも含めて発行しているわけですからちょっと金利が上がっただけでも利払い費がグッと増えるわけですよね。それが実際の財政破綻を引き起こしてしまうかもしれない。人々の不安が自己実現してしまうと問題がある。そこまで言わなくても、皆が結局、信用していなくて、増税あるよねという形で結局、家計の消費が伸びないとすれば、デフレからの脱却はないということになってしまうので、結局、悪い方へのシナリオというのが十分に考えられるんですね。これはどれが実現しますかということについて我々はこの段階で何も言えないし、少なくともやっていけないのは、ここでギャンブルをすること。藁をもすがるという気持ちもわかるのですが、現在、金融政策でデフレ脱却がなかなかできない、進まないということは、財政政策でそれができるということを意味していないわけですから」


藤井氏「まず視聴者の方にご理解をいただきたいけれども、経済学と経済とはまず違うものだと思ってください。経済学者が言っていることと、経済政策でやるべきことは関係していないとは言わないけど、多くの場合、関係ない。これをしっかりご理解いただいたうえでシムズ理論というものがあります。理論として、論文として正しいのかというのは、ある前提のもとでどうなるかという話があります。それを日本にあてはめるかは別です、これが1点。もう1点申し上げたいのは、シムズ理論は、今の日本に必ずしもあてはまらないのではないか。そういうような批判があります。僕もそう思っています。その点においてシムズさんは財政政策をやるべきだと言っている。このシムズさんの理論は現状にあっていない。と言って、財政政策は、だから、やらなくていいのだという結論は導けないですよね。別の論理で財政政策が必要であるという可能性はある、僕はそう思っている」



『国の借金』1000兆円超 消費増税は実施?先送り?
 
秋元キャスター「シムズ理論を受けて、消費税の増税は先送りになる可能性はあるのでしょうか?」


佐藤教授「政治的には言い訳に使いやすいかなと思います。ただ、シムズ理論は先ほど小幡先生が出した式があったと思うのですが、現在の借金の実質価値が将来の原資と見合っているかどうかですね。実は現在、日本はプライマリーバランスは赤字ですね。経済原資がマイナスです。でも、借金はプラスなので、結局どこかで財政は黒字化させないといけないんですよ。シムズ理論をベースに消費税を永久に先送りができますかと言われると、どこかで黒字化させないといけないのだから、それは無理よねというのが1つあります。もう1つ怖いのは、そうこうしているうちに借金が溜まりに溜まりまくって、結局は10%では将来的に足りなくなるかもしれない。となると、現在10%に上げることは景気にとってマイナスかもしれない、そうかもしれません。だけれど、10年先送りにして、10年後に、8%から15%に上げなくてはとなってしまいましたと。その時、景気の腰折れはどれだけですかということになります。これは夏休みの宿題みたいなもので、いずれやらなければいけないものです。百歩譲ってシムズ理論が正しいとしても、最終的に基礎的財政収支は全体として黒字にしなければいけないということは、どこかの段階で財政再建をしなければいけない。あとになればなるほど、結局必要な増税幅も大きくなるし、必要な歳出カットも大きくなる。つまり、あとになるほど厳しい財政再建が待っているよと、これをどうしますかということです」


藤井氏「財政再建とはプライマリーバランスを黒字化することではありません。債務対GDP費、GDPに対して債務を右肩下がりで下げることが財政再建です。状況によってはPBを黒字化することが必要な時もあると思う。だけど、金利が低い状況では必ずしもそうではない。さらに重要なのは、PBを黒字化しようとして財政カットをすることで、経済が縮小して債務対GDP費が悪化することだってある。たとえば、PBの黒字化目標を立てて、それを実現した国を2つ知っています。1つはアルゼンチン、1つはギリシャ。どちらの国もPB黒字を達成した瞬間、あるいは翌年に財政破綻をしました。なぜかと言うと、デフレの状況で、経済が悪い状況で、短期的に切り詰めたPBの目標をやっていると、経済全体がダメになって、税収が下がって、デフォルトしてしまうんです。そんな愚かなことをやるべきではない。日本がそうならない保証がどこにあるのだと。状況によっては、PB赤字のことを気にしないで、債務対GDPをしっかりと見つめながら、現在の局面においては経済成長を果たすために何が必要なのかということを優先する時があっていいと思う。でも、どこかでPBは黒字にした方がいいと思う。それをする時が出てくると思う。だけど、それはデフレの時にそれをやってしますと、ギリシャやアルゼンチンの二の舞になる可能性が十二分以上にあると思う」


反町キャスター「いかがですか?小幡さん」


小幡准教授「増税する気はないでしょうね」


反町キャスター「安倍政権が消費税引き上げを先送りする理屈として、このシムズ理論ははまると思いますか?」


小幡准教授「使いたがると思うけれども、はまらない。シムズ理論は今盛り上がってしまうと、先には使えないと思います。学問的には1990年に始まっていて、細々とずっと続いていて、シムズさんは皆さんがシムズ理論と言っているのとは別の誠実な経済学者…」


反町キャスター「シムズ理論は不誠実と聞こえる」


小幡准教授「この部分は彼のメインの話ではなくて、ちょっと興味があってやった1つの部分について、こう思うと。日本については、日本が1番インフレにならないから、俺の理論が当てはまる可能性があるのではないのということで提言して、それは呼ばれれば、嬉しいですから来ますけれども、ただ、日本のことは、本当はわからないから、皆でよく考えてねとおっしゃっているので、そういう背景があって、シムズ先生は学者の中で尊敬されていますし、きちんとした学者ですけれども、この理論に関しては異端のままなので。 ただ、アメリカでもインフレになりません、インフレにもっとした方がいいではないかという議論がある中の選択肢として皆、学問的興味を持った。なので、アメリカでも話題になっていますけれど、実際に使うという可能性はゼロだと。ですから、日本でも一時的に盛り上がりましたけれども、実際にそれを使うということはないと思います」



藤井聡 内閣官房参与 京都大学大学院工学研究科教授の提言 『機能的財政論』
 
藤井氏「この考え方は、学術界では最近顧みられることはないのですが、伝統的な財政論の考え方で、経済の状況に合わせて政府というものが、財政出動が必要な時はしっかり拡大し、財政出動が不要な時にはやらない。政府の財政収支だけを考えるのではなくて、経済全体がきちんと適正な形でインフレになっていくように、政府が積極的にいろいろと対応をはかっていく、これが機能的財政論という、日本がこれを採用することで財政再建が確実に達成されると同時に成長もできると思います」



佐藤主光 一橋大学大学院経済学研究科教授の提言 『即効薬はない』
 
佐藤教授「即効薬はないということだと思います。結局、シムズ理論であろうと、何であろうと、1つの理論に飛びついて、それさえやれば一挙解決なんていうのは夢見がちですけれども、それはない。アベノミクスの3本の矢は意外と正しくて、景気対策もしなくてはいけない、構造改革もしなければいけない、結局全てやらなければいけないということだと思います。我々はやってこなかったんですね。だから、そういう改革1つ1つを時間はかかるかもしれないけれども、地道に進めていくということ、これが求められるのかなと。奇策はないです」



小幡績 慶応義塾大学大学院経営管理研究科准教授の提言 『ポピュリズムは学者の責任』
 
小幡准教授「政治がポピュリズムに流れるのはやむを得ないと思います。特に経済政策のような専門的な政策において道具を与えているのは学者ですので、この道具が危なかったら危ないと言わなければいけない、使えなかったら使えないと言わなければいけない。だけど、ポピュリズムという背景を現実の政策にしてしまうのは学者のせいなので、学者の責任は重いなと思いますね。学者の世界で信頼されている人をちゃんと使うということが重要だと思います」